笹原流アニメーション制作マニュアルとは、笹原和也が監督する映像を制作する時に注意してほしいことです。
たくさんのルールを書きましたので、なるべくそれを守って制作していただくと、余計なNGがでなくなりますので、お互いにHappyになると思います。ですが、これらはすべて基本ルールですので、ルールを破るべき時もあると思います。その場合は、ご相談を頂ければと思います。
(みたいな感じでマニュアル化しているわけですが、その一部をご紹介させて頂きやす!)
★カメラワークの基本的なルール
・カメラの位置は意図なく動かさないでください。カメラの移動を試したくなった時は、事前に相談してください。
・カメラの方向のアニメーション(パンやティルト)はカメラターゲットを使ってください。カメラのターゲットは、常に止まらずに、何かしら動かすようにしてください。(詳細は「画面の揺れ、はずし」について)
・カメラの高さは基本的にアオリ中心です。おへそぐらいの高さから狙ってください。水平はほとんど使わないでください。中途半端な俯瞰はなるべく使わずに、ここぞという時に大俯瞰を使うようにしてください。
・カメラの焦点距離は基本を80mm以上としてください。もちろん、例外はあります。
・指示または相談がない限り、各カットごとのアクションはつなげてください。間に別のカットが挿入される場合は別です。
・絵コンテ通り作っても、いろいろな都合でカメラサイズ(バストアップ、フルショットなど)が似てしまうことがあります。その場合は、カメラサイズが似ないよう、なるべくコントラストが大きくなるよう差別化してください。逆に言えば、カメラサイズの差別化がされていれば、良いカメラワークになります。
★カメラの焦点距離について
・カメラの焦点距離は基本を80mm以上としてください。理由は広角レンズで撮られた画面んからは映画っぽい雰囲気を感じないからです。
詳しくはこちらのホームページをどうぞ 「アニメ製作現場のお話」
http://members2.jcom.home.ne.jp/0914488901/anim.html
・もちろん、広角レンズが一切NGというわけではありません。ですが、広角レンズを使うカットは、広角レンズを使わないと撮れない時だけにしてください。意味なく広角レンズを使わないでください。
・長い焦点距離のカメラを使うと、部屋の狭さなどでカメラと被写体の奥行を十分に取れない場合があります。その場合は、壁に穴をあけたりしてください。実写の撮影でもよくやることです。
★良いアニメーションのために三つの要素
良いアニメーションのためには、以下の三つの要素が必要です。
①よいお芝居プラン
②慣性の法則がきちっと表現されている
③予備動作が入っている。
アニメーションがうまくないな。と思った時には 以上の3点の観点で考えてみてください。
★良いお芝居プラン
よいお芝居プランのためには以下のような要素があると良いでしょう。
①キャラクター性やキャラクターのバックボーン、設定がきちんと表現されている。軍隊経験者であれば、訓練された動きなど。
②複数の動作を同時にやる。 食事をしながら会話をしたりとか。警戒中であれば、武器をいじりながらの会話とか。
③役者が自分の置かれている状況をきっちり把握し、それに合わせた小芝居をする。 たとえば、飯屋の暖簾をくぐって出る時に、反対側をちらりと見てから、進行方向にすすむ。(自動車などが走ってきてないか、無意識に確認している。)
④小道具があると色々とラク! 例えば、「カップルがいて、女が男のコーヒーカップに勝手に角砂糖を入れる」それだけで、二人の関係性がわかります。
⑤キャラクターの感情が表現できている。これは一言では説明できませんので、また後日・・。
★慣性の法則
慣性の法則とは
物体に外部から力がはたらかないとき、または、はたらいていてもその合力が0であるとき、静止している物体は静止し続け、運動している物体はそのまま等速度運動(等速直線運動)を続ける。
アニメーションにおいて、慣性の法則の具体的な表現例としては、
①物体が動き出す時には、急には動き出さず、 急には止まらない。
②関節のあるものであれば、力が直接加わっている部位とそうでない部分との動きの落差で表現します。
③飛行機が方向転換しようとして、機体を傾けた時に、実際に方向が変わるまでに、時間がかかるのも、慣性の法則です。
④巨大な隕石にロケット噴射口をつけ、ロケットを噴射した時に、実際に動き始めるまでに時間がかかる。
などなどがあります。
基本的に、3DCGアニメーションの世界では、現実世界よりは慣性の法則を効かせる方向で表現しよう。つまり、モノの質量をより高く表現してください。それがカートゥンのデフォルメとは違ったリアルなデフォルメとなります。
ハイスピードカメラで撮影されたものを参考にしてください。ハイスピードの世界では、モノは想像以上に曲がっています。
★アクションの動きのキレについて
アクションの動きにキレを出すにはどうしたらいいか?を考えてみる。
動きのスピードが単に速ければいいのか?であれば、動きを早送りすれば良いのですが、うまい感じに見えないことは試してみれば、わかります。
では、何が大きく違うかというと、動きの「残し」の大きさであります。
慣性の法則を考えるといいのですが、「残しの大きさ」は「先端の重さ」、「関節のやわかさ」、「動きのスピード」できまります。
動きが速いのに、残しが小さいということは、「関節が異様に硬い」か、「先端が軽い」ということになります。
打撃のパワー感を強くするのであれば、先端は重くなるようにするべきですから、
早く動いてかつ、残しを大きくすれば、いわゆる「動きのキレ」が表現できるのではないか。笹原はそう考えております。
★予備動作について
予備動作は「パンチを打つ時に打撃方向とは反対に手を引く」など、本動作をやるための準備の動作です。
刀を振り下ろす時の刀の振りかぶり、ジャンプをするために膝や腰を曲げる。なども予備動作です。
わざわざ予備動作として認識せずとも、普通にやっているものも多いでしょう。
予備動作の目的は、観客に次の動作を予測させ、わかりやすくするためです。
とくに素早い動きをする時に有効です。
予備動作があることで本動作がとても速くても、人の目に認識しやすくなります。
動きが速すぎて見づらい時は予備動作をしっかり表現してください。
ボクシングなどの格闘技で言えば、相手に次の行動を悟られないために、なるべく予備動作はないほうが良いのですが、アニメーションの世界では、視聴者になるべく次の行動を悟らせるようにしてください。