2011年9月29日木曜日

CG屋さんのための企画教室 その4 「企画を通すために必要なこと」

CG屋さんのための企画教室 その4です。

今回は 「企画を通すために必要なこと」を考えてみます。

僕はCAT SHIT ONE -THE ANIMATED SERIES-の企画を成立させたことに加えて、現在進行中のオリジナル作品があります。今のところ、2本の企画を成立させた経験がありますので、その経験を踏まえてお話します。

①ブランド力
②企画の訴求力と予算との関係
③決裁権を持つ人との信頼関係

以上の3点にわけて説明しますね。

まず、
①ブランド力について
たとえば、「庵野秀明監督が新しい映画を作るッ!」ってワードだけで、
お金を出したいという人がわんさか出てきますよね。
ブランド力があるのは、とても重要です。

同じ企画書でも、僕が持っていくのと、庵野秀明監督が持っていくのとでは、
成功率に大きな差があるでしょうw。

ですが、ほとんどの人はブランド力がありませんから、
他の部分で勝負しなくちゃいけないということを認識しなくちゃいけません。
つまり、
有名なクリエイターの書いた企画書がたいしたことなかったからといって、
それを参考にしちゃいけないってことなのですw。
(言いたかったことはソレかいw!)

②企画の訴求力と予算の関係
たとえば、10万円でおもしろい短編映像が作れるって言われれば、
だれしもが「ちょっとお金出してみようかな?」と思うでしょう。

かかる予算が安ければ、ハードルもぐっと下がります。
だから、
作りたい表現がお金のかからないやり方の人はとても幸運です。
逆に予算のかかる表現をしたい人はたいへんです。
企画を通すためのハードルがぐんと上がります!

③決裁権を持つ人との信頼関係

企画を通す際に、強く印象に残ったのは、
お金を持っているまたは決裁権のある人と親しいということは、
こんなに力があるものかということです。

10万円ならいざしらず、
1千万円、5千万円、1億、2億という金を使うことには、
どうしても「こいつらに金出して、本当に大丈夫なんかいな?」
という気持ちが起こります。

そこを乗り越えるだけの信頼関係がないと、
どんなに企画の内容が良くたって、企画は通りません。

残念ながら、現在の僕自身には多額の決裁権を持っている人を口説き落とすだけの
信頼感はありません。
僕に協力してくださるプロデューサーさんの力があってこそ成立しますね。

決裁権を持つ方に信頼されていること、
またはその間に入ってくれる方に信頼されていること

これも企画を通す上でとても重要なことなのです。

なんつって!

2011年9月15日木曜日

CG屋さんのための企画教室 その3 「自分のやりたいことを、他人におもしろいと思わせる。」

CG屋さんのための企画教室 その3
「自分のやりたいことを、他人におもしろいと思わせる。」です。

ハイボール飲んだら、ダルくなってきましたが、
あと少しがんばります。


他人を自分の企画に巻き込む時の、最大のハードル
それは「自分のやりたいことを、他人におもしろいと思わせる。」です。

これが一番難しいです。

まずは企画を30秒ぐらい説明して
聞いている人が「なんなのそれ?!」って興味をもってくれない企画は
企画のアイデアが足りないと思って、
間違いありません。

グラスホッパー・マニファクチュアさんの、ロリポップ・チェーンソーを例に出すと
たぶん、企画立案の最初の方で

「今度のゲームは、チアリーダーがチェーンソー持ってゾンビを切り裂きまくるんや!(大阪弁は勝手な想像です)」

って、スタッフさんの前で言ったんだと推測します。 
その時は「おおっ!おもしろい!」っていう人も少なかったかもしれません。

ですが、
それに対して、絵をつけたところで
「おおっ!おもしろい!」っていう人がぐーんと増えたんだと予想します。
(真実はわかりませんよ)

できれば、企画のアイデアは
30秒話しただけで、「それおもしろい!すごい!参加したい!」と
言ってくれる人がたくさんいることが理想です。

ですが、おもしろい企画のアイデアを考えることは簡単なことではありません。

というわけで、
「自分のやりたいことを、他人におもしろいと思わせる。」ための思考法をご紹介します。

まずは、自分のやりたいことを
できるだけシンプルにします。

たとえば「女がゾンビを殺す」 ぐらいにシンプルにします。

これが「17歳のセーラー服を来た女の子がゾンビを殺す」ぐらいに余計なものがついていると、
邪魔です。

「そのやりたいこと」に付加できるアイデアがかなり限定されてしまいまい、
なかなか新しい発想ができなくなります。

だから、やりたいことを絞って
3ワードぐらいにします。
たとえば「女がゾンビを殺す」です。

「女がゾンビを殺す」であれば、いろんなアイデアを足せます。

「女がゾンビを殺す」+「老後」
「女がゾンビを殺す」+「男の料理」
「女がゾンビを殺す」+「育児」
「女がゾンビを殺す」+「水着のおねえちゃん」
「女がゾンビを殺す」+高校野球
「女がゾンビを殺す」+戦隊ヒーロー


「女がゾンビを殺す」+「男の料理」だったら、
ゾンビの肉がとても美味だったら、女が料理人だったら、
という設定が思いつきますね。

30秒で言うなら、
「ゾンビが飼われ、ゾンビの肉が人間の食料になった時代で、最高に美味とされる野生のゾンビを求めて、
武装した女料理人が旅をしている」

みたいな話が考えられます。

まずは、
「やりたいこと」と真逆の要素を足すことが、手っ取り早い方法です。

「女がゾンビを殺す」であれば、
ゾンビが死の象徴でなので、反対の「命あるもの」「暖かいもの」「育てること」などが考えられますね。

そんないくつかのパターンを試してみて、
おもしろそうなものをいくつかピックアップします。
その中から、他人に説明してみて、
反応が良いものを、どんどん発展させていけばいいでしょう。

机に向かっても考えると難しいので、
シンプルにした「やりたいこと」のアイデアをいつも頭の片隅に置きながら、
目にしたもの、読んだもの、聞いたもの、を「やりたいこと」と合体させて
おもしろいかどうかを、
常に頭の中で実験してみると良いと思います。

僕は常に2~3個のやりたいことが頭の片隅にあって、
たまに刺激があると、
「やりたいこと」と合わせてみたらおもしろいかを考えています。

そうやって、「アイデアを思いつく」→「誰かに説明する」を
繰り返していくと、
考え方のコツみたいなものが見えてきます。
アイデアを出しやすくなりますし、
どんなアイデアならば、人に食いついてもらえるのか?
ってこともわかってきます。

企画のアイデアを考えるのは
一種の訓練だと僕は思っています。

CG屋さんのための企画教室 その2 「雪だるま式企画立案法」

こんばんは
笹原和也です。
今回は2回分を一度に書いてしまいます。
現在午前1時45分です。 

明日も朝9時に子供を幼稚園に送っていかないといけません。

おっと、話がそれました。

「CG屋さんのための企画教室 その1」では 
「やりたいことを思い出し、さらけ出す」ということを述べました。

その2では
「雪だるま式企画立案法」を説明します。

まず、企画とを人に伝える時、
いろいろなフェーズがあります。

たとえば、こんな感じです

①まずは、親しい仲間に説明し、反応をみたりするために伝える。

②次に、現時点では親しくないけど、企画の仲間(有名なイラストレーターさんとか)になって欲しい人に伝える。

③最後が その企画にかかるお金の決定権がある人に伝える。
です。

このいくつかのフェーズにおいて、
企画書は同じ形のものなくていいのです。

お金の決定権がある人に伝える時に最高な状態になっていればいいのです。
それまでは、すこしずつ良くなっていけばいい。

グラスホッパー・マニファクチュアさんの「ロリポップ・チェーンソー」をモチーフにして説明してみましょう。 (とくに取材したわけではなく、あくまで僕の想像です。)

ごく親しい人に伝える時は、
「かわいい女の子がゾンビを殺しまくる作品やりたいんだよね~」
ぐらいでいいのかもしれません。
おそらく反応は「ふーーん」です。

企画の仲間になってくれる人に伝える時には
もうちょっとおもしろくなっているといいですね。
(ここがちょっと難しいんですが、第3回で説明したいと思います。)

たとえば 
「チアリーダーの女の子が、ゾンビを殺しまくるんだよね~!」
とかです。
ただの「女の子」が「チアリーダー」になりました。
これで何人かの人が「なにそれ??!!」と乗ってきます。

イラストレーターさんが乗ってくれれば、
それで絵を描いてくれます!
かわいくてカッコいいコンセプトアートを描いてくれれば、
企画の説得力がグーンと上がります。

そのコンセプトアートを見て、、
ライターさんが巻き込まれてくれば、
キャラクター設定がより深まり、作品に説得力が出ます。

実際にはそんなトントン拍子に行きませんが、
時間をかけながらも、企画がおもしろくなっていきます。

僕はこれを 『雪だるま式企画立案法』 と呼んでいます。
かかわる人が多くなるにつれて、
企画がおもしろくなっていくのです。

自分でなんでもやろうとすると、
グーンとハードルが上がりますが、
いろいろな人の力を借りて企画を立案すれば
ハードルは下がります。

それに、最終的には お金の決定権のある人も
その企画に巻き込んでいくわけですから、
それはまるで、
企画の雪だるまがいろんな人を巻き込んで
どんどんと大きくなっていくイメージなのであります。

だから、『雪だるま式企画立案法』なのです。

CG屋さんのための企画教室 その1 「やりたいことをやる」

こんばんは!
笹原和也です。

今日は久しぶりに、
オリジナル企画について書いてみたいと思います。

今まで企画については、何度かブログ上で文章を発表してきましたが、

その当時とは考え方がちょっと変わりましたので、
改めてブログに書くことにしました。

僕以外の人がオリジナル作品をやるようになって、
ライバルが増えるのも困るのですが、
それよりも、CG業界全体的に、
オリジナル作品をやろうという気運を高めるほうが大事だと思ったのです。

なんだか、誰も知らないような原作を引っ張り出してくるぐらいなら、
オリジナル作品やりましょーよ!と言いたいのです。

というわけで、
さっそく話を始めますが、

オリジナル作品をやる時に一番大事なこと

それは
「企画推進者がやりたいことをやる!」です。
断言しちゃいます。

プロの企画屋さんに言うには
「やりたくないこともやるのが企画のプロだ」
らしいのですが、

自分たちが自分たちのお金または責任で、作品を作るのであれば、 
もうそれは「自分たちのやりたいこと」をやればいいのです。
間違いないです。

もちろん、その「やりたいこと」を他人にも受け入れられるよう形を変える必要があるのですが、
他人に受け入れられるために、「やりたいことをやらない」というのは、
まさに本末転倒で、やる意味が全くありません。

なぜなら、
企画は発案してから、形になるまで、何年も時間がかかる場合があります。
かかる予算が大きければ大きいほど、形になるまでに時間がかかります。
(もちろん、自分の名前にブランドがある人は、何倍ものスピードで進みます。)
それなのに、自分のやりたいことが入っていない企画を
お金が発生しない状態で、何年も継続できるでしょうか? 

そう、できるわけないのです。

だから、
オリジナル作品を作るのであれば、
「やりたいことをやる」ことが重要なのです。


そこまで理解して頂けたでしょうか?

それでは、
みなさんのやりたいことを見つけましょう。

この時点で「はい!○○がやりたいです!」と明確に答えられる人、
すごいです!
なかなかいません。
稀有な人です!

だから、やりたいことがなくても大丈夫です。安心してください。

さらに言えば、実はやりたいことは、
みなさんの中に必ずあるんです。
やりたいことがなかったら、
こんな仕事して、楽しいはずがありません。

でも、それが言えないのは、
好きなものを言葉にして意識してなかったり、
カッコつけてたり、
もっと高尚なものじゃないといけないんじゃないか?と思ったりして、
言えないだけなんです。

そんな高尚なものでなくていいんです。

「ゾンビを日本刀で斬りまくりたい!」
「女の子が銃を持って撃ちまくりたい!」
「ロボットがガシガシーンと変形したい!」
「かわいい動物を愛でたい」
「かわいい女の子がボコボコにされる絵がみたい」

とか、そんなくだらないことでいいんですよ。
ですが、
あなたのウソ偽りのない背筋がゾクゾクするような欲望であることが必要です。

くだらないことでいいので、
あなたの背筋がゾクゾクすることを思い浮かべてください。

そしたら、
それを誰かに言いましょう。
あなたの性癖のようなものを誰かに言いましょう。

これから、あなたの背筋がゾクゾクする恥ずかしいことを
世に知らしめる計画を発動するのです。
そんなことで恥ずかしがっちゃいけません。

これが第一のちょっとしたハードルです。